「クラシック音楽をもっと身近に」――ウィーンで見つけた、音楽が日常にある風景

八角百香さま
国立音楽大学音楽学部演奏・創作学科鍵盤楽器専修ピアノ専攻卒業。全日本ジュニアクラシック音楽コンクールピアノ部門全国大会第1位。大学在学中には国内外研修奨学金給付生として推薦され、オーストリア・ウィーン国立音楽大学夏期国際音楽ゼミナールに参加しディプロマを取得。現在は一般企業に勤務しながら、レストランやコンサートでの演奏活動、出張型ピアノレッスンを行う。
不思議な偶然と縁が繋いだピアノとの出会い
――まず現在の活動内容について教えてください。
八角さま:現在は一般企業で働きながら、レストランで演奏したり出張型のピアノ講師をしたり、自主公演を企画するなど演奏活動をしています。
レストラン演奏は平日の夜だったり、土日に演奏会へ出演したり、友人たちと自主公演を開催したりと、さまざまな形で音楽活動を続けています。
――普段はどのような場所で演奏や活動をされているのでしょうか?
八角さま:演奏する場所も幅広く、レストランやダイニングバーのような空間もあれば、小規模な音楽サロンで演奏することもあります。
――ピアノを始めたきっかけは何だったのでしょうか?
八角さま:通っていた幼稚園に、たまたまピアノ教室が付いていたことがきっかけです。
家族は全然ピアノや音楽をやっているわけではなかったのですが、「幼稚園についているし、ピアノもいいって言うし、やってみようか」みたいな、本当にそんな感じでした。
それと、たまたま祖母の近所の方がアップライトピアノを持っていて、引っ越す時に「もしよかったらアップライトピアノがあるから要らない?」と相談を受けていたんです。
ちょうどそのタイミングでピアノ教室を始めることになったので、「ピアノをもらえるならやってみようか」という感じでした。
――ピアノを深く長くやる方は、ご両親がやっていたとか、近所の方がやっていたとか、そういうきっかけが多い印象でしたが八角さまの場合は少し違うケースですね。
八角さま:そうなんです。 でも、本当にいろいろ運が良かったというか、始めてからもいろいろなご縁がありました。
母が私を出産した病院で、たまたま同室だった方がいて、その方と母がお友達になったんです。その方がピアノの先生をされていました。
そして幼稚園の頃、私が幼稚園でピアノを習っていてすごくピアノが大好きで、ずっと家でも弾いていることを母がお話ししたところ、「そんなに好きだったら、一緒に子ども向けのコンクールに出てみない?」と誘っていただいたんです。
母は「コンクールなんて大きな舞台に出て大丈夫なのかしら」という感じだったらしいのですが、「みんなで楽しく出るようなものだし、せっかく舞台にも出られるから、一緒にぜひ」と言っていただいて。
そこから少し本格的にコンクールに出るようになって、本格的にピアノの道に進んでいきました。本当にいろいろな巡り合わせや運が良かったと思います。
――「音楽の道に進みたい」と意識したのはいつ頃でしたか?
八角さま:小学生の頃、中学受験を決めてピアノから離れ、本格的に受験に向けて勉強を始めていたのですが、離れるとやっぱりピアノが好きで続けたいという想いに気付きました。「やっぱり勉強よりもピアノを続けたい!」と話したら母が音大の附属中学校があることを見つけてくれたんです。
そして同じ頃、父が会社の同僚の方からたまたま「娘さんピアノ習ってたよね?のだめカンタービレって音楽が題材の漫画が面白いから娘さんと見てみて!」と話を聞いて漫画を買ってきてくれたんです。同じくらいのタイミングでテレビドラマも始まり、のだめカンタービレにハマりました。こうしたいろんなきっかけが重なり「私も音大に行ってピアニストになりたい!」と思いました。
本当にいろいろな巡り合わせがつながって、ピアノの道に進むことになりました。
上手い下手よりも、「弾いていて楽しい」と思ってもらいたい

――ご自身の中で特に大切にしている音楽活動のテーマはありますか?
八角さま:やっぱり音楽の楽しさや素晴らしさを伝えていきたいというのはずっと思っています。
クラシック音楽って、少しハードルが高いイメージがあると思うんです。でも、意外とそうではなくて、クラシック音楽はいろいろなところで使われています。
たとえば、フィギュアスケートで浅田真央さんが使っていた曲や、羽生結弦さんが使っていた曲が、実はショパンの有名な曲だったりします。テレビCMでも使われていますし、結構身近なところにクラシック音楽はあるんです。
そういう意味で、クラシック音楽をもっと身近に、J-POPと同じように楽しんでもらえたらいいなと思っています。
――そこは音楽の本質ですよね。楽しめないと続けられない事のひとつだと思います。
八角さま:はい、子どもたちを教えていても、とにかくすごく上手になってほしいというよりは、シンプルにピアノを楽しんでほしいという思いがあります。
ピアノを習っている人は人口としては多いと思うんです。でも、小学校で辞めてしまったり、先生が怖かったからとか、練習が嫌いだったからとか、楽しくなくて辞めてしまう人も多いなと感じていて、それはすごくもったいないと思うんです。
だから、上手い下手というよりも、「弾いていて楽しい」と思ってもらえるようなレッスンや演奏ができたらいいなと、常に思っています。
――全日本ジュニアクラシック音楽コンクールピアノ全国大会第1位という結果も含め、学生時代はかなり厳しく音楽と向き合われていたと思います。当時はどんな日々でしたか?
八角さま:特に小学生の頃、中学校受験をするとなった時は、本当に音楽漬けの日々でした。
それも巡り合わせだったのですが、アップライトピアノを譲ってくださった方のいとこにあたる方が、世界的なピアニストの方だったんです。
当時千葉に住んでいたので東京都内の先生のご自宅に月に2回家族で車に乗ってレッスンに通っていたので両親には本当に感謝しています。
先生もすごく厳しかったですし、小学生なので言われてもすぐにはできないこともたくさんありました。
――そのあたりから本当に音楽一色ですね。
八角さま:小学生の時は、友達と遊んだ記憶があまりなくて、学校が終わったらすぐピアノの練習に行ったり、家で練習したりしていました。
今振り返ると、小学生の頃は基礎を叩き込まれる日々でした。
そして、音大の附属中学校・高等学校に入るといろいろな楽器の生徒が集まっているので、アンサンブルのように一緒に演奏したり、いろいろな楽器と関わったりするようになりました。
――そういった音楽と密接な生活をしていくなかで変化はありましたか?
八角さま:音楽の幅が広がっていったと思います。中学、高校、大学と進むにつれて、音楽と向き合う日々はどんどん濃くなりました。
ピアノを弾くことに対しての考え方も変わりましたし、いろいろな楽器と演奏すると、たくさんの発見がありました。
大学生の時には、オーケストラと一緒に演奏する機会もいただいて、それは本当に一つの夢だったので、夢が叶った瞬間でもありました。
そうやっていろいろなことを学びながら、大学を卒業するまで、本当に音楽とひたすら向き合う日々を過ごせたと思います。
――音楽の幅が広がったことで具体的にはどういった変化がありましたか?
八角さま:ピアノは「1台でオーケストラ」と言われるくらい、いろいろな音を出せる楽器です。でも、一人で弾いている時は、ピアノの鍵盤に触れているだけです。
先生から「ここはオーケストラのように」と言われても、想像するしかなかったんです。でも、いろいろな楽器と触れ合うと、「バイオリンはこういう音なんだ」「トランペットはこういう音なんだ」と実際に感じることができます。
オーケストラの曲も自然に聴くようになっていく中で、自分の演奏も変わっていきました。
作曲家はピアノ曲だけでなく、オーケストラ曲もいろいろ書いています。だから、ピアノ曲の中にも、オーケストラの響きを想像してかいているものがあります。
そういうことは昔からレッスンで言われていたのですが、それまでは想像でしかありませんでした。
でも、実際に聴いたり、一緒にアンサンブルをしたりすると、「こういう音を出すと、こういうふうに聴こえるんだ」と実感できます。
そういう意味で、ピアノの音を出す幅がより広がったというのは、大きな変化でした。

――ピアノは繊細な楽器で演奏も繊細なイメージがあります。1音1音気が抜けないというか。心身ともに消耗するみたいな側面はありますか?
八角さま:そうですね。練習から集中力がすごく必要です。
幼少期からピアノをやっていて、今、音楽とは関係のない一般企業で働いていても、「集中力はすごく培われていたんだな」と社会に出て気づきました。
ピアノを弾いている時は、1音1音を聴かなければいけません。
いろいろな音を聴いて、楽譜を読んで、ペダルの踏み具合、目も耳も、いろいろな感覚を研ぎ澄まして練習します。それを1時間、何時間単位でやるのが当たり前でした。
いろいろな感覚を研ぎ澄まして集中することは、練習する上で一番大事ですし、今も培われているなと感じています。
――メンタル的な体力も要すると思いますが?
八角さま:そうですね。ピアノはアンサンブルで弾くよりもソロで演奏することが多く、1人で練習することが多いので、心が折れた時にカバーしてくれる人がいません。モチベーションを保つのも結構大変です。
曲ができあがった後も、モチベーションを保つことが難しくて、自分としては「できた」と思うと、だんだん練習のモチベーションが下がってきてしまうんです。
それを本番があるところに一番高く持っていくために、どこに合わせるかを逆算することも難しかったりします。
――スポーツに近いものを感じますね。大会前に変に手応えをつかんでしまうと、本大会が心配になるみたいな。
八角さま:同じですね。その前に体力を使いすぎてしまうと、本番で発揮できないというのはありますよね。
あとはピアノは練習面でも結構泥臭いかもしれないです。幼い頃から続けている基礎練習はプロになっても、有名なピアニストでも必ずやっていることだと思います。
指を動かす練習曲を繰り返し弾いてから、曲を弾くなど、そういう基礎の練習があります。そこもスポーツと通じるところがあるかもしれないですね。
ウィーンで感じた、音楽が生活の一部になっている世界

――大学時代にウィーン夏期国際音楽ゼミナールへ参加されていますが、当時なぜウィーンだったのでしょうか?
八角さま:恩師の先生がウィーンの学校に通っていて、先生からずっとウィーンの学校のことや、音楽環境のこと、舞踏会で踊るようなダンスのリズムのことを聞いていました。
ウィーンは「音楽の都」と言われるくらい、クラシック音楽が生活の一部のような街です。 舞踏会があって、舞踏会に出るためにダンスを習うことも当たり前だそうです。
でも私たちはワルツを習ったこともないですし、先生からも「ダンスのリズムは実際に見たりやってみないと分からない」とずっと言われていました。
――音楽も体験がひとつ大切な要素になりますね。
八角さま:ウィーンに実際に行って、ワルツを習ったり、学校に通ったり、スーパーに行って買い物をしたり、その街の生活などを知る。先生が通われていた学校に行って、実際に経験して感じてみたいという思いは、習っている時からずっとありました。
実際に私も行って感じたうえでピアノを弾いたら、どう変わるんだろうという興味がずっとあったんです。それがウィーンに行こうと思った理由の一つです。
もう一つは、大学に国内外研修制度があったことです。運良く大学から奨学生に選んでいただくことができたので、その制度を使えたことも大きかったです。
大学の先生からも「ぜひ参加したらいいんじゃないか」と言われていたので、せっかく行くならウィーンに行こうと決めました。
――実際にウィーンへ行って、最初に感じたインパクトは覚えていますか?
八角さま:国内外研修で行ったのは大学4年生の時なのですが、実は大学1年生の時に、母とチェコ、ドイツ、オーストリアを巡る旅行に行ったことがありました。
その時に母と「一度ウィーンに行って大学に行ってみよう」と話していました。その大学1年生の時に行ったのが最初です。
ウィーンの街は、歩いているだけで映えるんです。石畳で、おしゃれな建物に囲まれていて、街並みから全然違いました。
それに、歩いていても道でバイオリンを弾いている人がいたり、レストランの中で演奏している人がいたりしました。毎日、バレエとオーケストラを融合したような、一般向けの公演もありました。
オペラ座でオペラを見る、バレエを見るというと、すごく敷居が高い感じがするんですけど、そうではなくて、誰でも、子どもでも楽しんでいいよ、という雰囲気でしたね。
「これが先生の言っていた、音楽が生活の一部になっている人たちの生活なんだ」と実感しました。
――逆に、日本ではクラシック音楽が“少し遠い存在”になっていると感じる部分はありますか?
八角さま:どうしても日本では敷居が高いイメージがあると思います。
でも、ウィーンの人たちにとっては、J-POPのライブに行くのと同じような感覚だったり、映画館に行くような感覚で行けるものなんですよね。学生だと2,000円くらいで見に行けたりもします。
日本のクラシックのコンサートは、チケットも少し高いですし、なんだか敷居が高くてお堅いイメージを持ってしまいがちです。
でも本当はそうではなくて、もっと日本でも身近になったらいいなと、ウィーンに行ってより強く思いました。
もっと自由に音楽を楽しめる場所が増えてほしい

――日本人にとってクラシック音楽がもっと身近な存在になるにはどういったことが必要でしょうか?
八角さま:そもそもの価値観を変えたいなと思っています。
たとえば、映画館に行く感覚でオペラやオーケストラを見に行くという感覚は、今の日本人の中にはあまりないと思うんです。そのためにはもっと演奏できる場所が必要だと思います。
海外では、音大に通っている学生が毎日のようにどこかで演奏する場所があります。それがレストランかもしれないし、サロンのような場所かもしれないし、大きなホールかもしれない。いろいろな場所があります。
もっと気軽にみんなが入れて、音楽を演奏したり聞きに行ったりできるコミュニティを将来作れたらいいなと考えています。
――場所を借りようと思うと高かったり、いろいろな規制があったりしますよね。もう少し寛容というか、音に対して自由であるといいのかなと思います。
八角さま:本当にそう思います。もっと自由に音楽を楽しめる場所が増えたらいいですよね。
最近だと、街中にピアノが置いてあって、誰でも弾いていいという場所があると思うんです。ああいう場所がもっと増えたら素敵だなと思います。
――ウィーンでの経験が、現在の活動や価値観にどんな影響を与えていますか?
八角さま:やっぱり一番大きかったのは、「音楽ってもっと楽しんでいいんだ」と実感できたことですね。日本にいると、どうしてもクラシック音楽は特別なものというイメージがあります。
もちろん芸術として深く追求していくことも大切なんですけど、それだけではなくて、生活の中に自然にあるものでもいいんだなと思いました。
ウィーンでは本当に街の中に音楽があって、演奏する人も聴く人も特別なこととして捉えていないんです。すごく自由だなという感覚です。
その感覚に触れたことで、自分もそういう場所を作りたいと思うようになりました。
――「日本人にクラシック音楽がもっと身近な存在になる場所を作りたい」という夢に向けてどんな取り組みをしていますか?
八角さま:現在おこなっているレストランでの演奏も、その一つだと思っています。もともとクラシックを聴きに来た人ではない方もたくさんいらっしゃいます。
食事をしながら聴いてくださる中で、「この曲知ってる」「クラシックっていいですね」と声をかけてもらえることもあります。
そういう体験を少しずつ増やしていけたらと思っていますし、ピアノを教える時も、「楽しい」と思ってもらうことを大切にしています。まずは音楽を好きになってもらうことが大事だと思うので。
リアルな心情や表情、感情を演奏にのせる
――長く音楽を続けてきた中で、音楽に対する考え方は変化しましたか?
八角さま:変わりましたね。学生時代は、技術を高めることや、知識をインプットすること、コンクールで結果を出すことを意識していました。
もちろん今も技術は大切なんですけど、社会に出てからは音楽って人に癒しを与えるし心を豊かにするものだなと俯瞰して見られるようになりました。だからこそ音楽の表現の幅が広がったなと感じます。
――音楽に対する視点も変わったところがありますか?
八角さま:そうですね。音大の頃はまわりも音楽が日常だったので、仲間内での感想も専門的なんですよね。
でもそうでない方が演奏を聞きに来てくれたときに、知らない曲だけど楽しかったと言っていただけたり、感動して涙しながら聞いてくださったことは本当に嬉しくて、私にとってはすごく衝撃的な出来事でした。
音楽の温かさや美しさ、心から楽しむということを社会人になってから実感しました。
――いろんな経験がそのまま音楽に反映されていくような面もありますか?
八角さま:あると思います。いろんな経験をして感じたことや抱いた感情はその経験からでしか得られません。そういった感情が音楽にも出ると思っています。
そうしてどんどん音楽の幅は広くなっていくと思いますし、こういうふうに表現したい、こう弾いてみるのもありなんじゃないか?というアイディアも今のほうが浮かんでくる気がしています。
――クラシックは譜面に忠実というイメージがあります。一方で、同じ曲でも演奏者によって全然違って聴こえることがあります。“自分らしさ”はどこに出るものなのでしょうか?
八角さま:そのときの心情をシンプルに表現することが大事だと思います。
曲ごとにイメージがあると思うので、そのイメージや感情をのせる。楽譜通りに弾くのはもちろん大事ではあるのですが、楽譜にも背景や作曲家の意図があるはずです。
そういったところを自分の心情と作曲家が何を伝えたかったのか、どんな景色を見ていたのか。そういうことを考えてうまくかけあわせながら演奏しています。
――ただ忠実に演奏するのではなく、自分なりの表現とイメージをふくらませていくんですね。
八角さま:楽譜にフォルテがあったとして、明るいフォルテ、力強い怒りのこもったフォルテでは全然違いますよね。
やっぱりリアルな心情や表情、感情みたいなものが一番大事だなとずっと感じています。
誰でも気軽に演奏できて、誰でも気軽に聞きに来られる場所を作りたい

――音楽の道を進んでいる方にずっと聞きたかったのですが、今、AIが進化していて、誰でも音楽を作れたり、AIが作った音楽に合わせて楽しんだりする時代になっています。それ自体は僕もすごく良いことだと思っています。一方で、人間にしか出せない音や、拍、間など表現もあると思うんです。八角様はAIと音楽の関係についてどう考えていますか?
八角さま:AIは瞬時にいろいろな音楽を生み出せますよね。それはAIの大きな強みだと思います。
ただ、細かな感情や、少し驚くようなニュアンス、そういう部分まではやっぱりAIには分からないと思うんです。
先ほどおっしゃっていたような「間」だったり、人それぞれのテンポ感だったり、そういったものはAIだと100回やれば100回同じになります。でも人間は違いますよね。
だからといって、私はAIが音楽を作ること自体が悪いことだとは思っていません。むしろ、お互いにWin-Winの関係になれればいいんじゃないかなと思っています。
例えば作曲家の方が、「この曲をこういう雰囲気にしたい」と考えたときに、AIが「こういう案はどうですか?」と提案してくれる。それって少なからずヒントになると思うんです。
「あ、なるほど。こういう発想もあるのか」と気付かせてくれる存在にはなれると思います。
――あくまで人間がAIを使う側でいられればもっと音楽が楽しくなりそうですね。
八角さま:自分だけで演奏したり、自分だけで曲を作ったりしていると、どうしても発想が偏ってしまうこともあると思うんです。
そういう時にAIを使うことで、「こういう方法もあったんだ」「こういう作り方もあるんだ」「こういう練習方法や弾き方も面白いかもしれない」という新しい視点が得られますよね。
AIと共に音楽の幅を広げていけるのであれば、それは素晴らしいことだと思います。そうやって音楽がもっと豊かになっていくんじゃないかな、と個人的には思っています。
――人にしかない感覚や偶然性みたいなものは、AIからは生まれにくいなど感じています。偶然が生むサプライズというか、「そのコードからそこへ行くんだ」という発見の連続が、音楽の醍醐味の一つだなと感じています。
八角さま:仮に間違いのない完璧な演奏ができたとして、それだけで人の心が動くかというと、やっぱり人の心を動かせるのは人だと思うんです。
だからそこはあまり恐れすぎずに、「じゃあAIを使ってやろう」「もう少しアイデア出してよ」「何かヒントちょうだい」というくらいの距離感でいいんじゃないかなと思っています。
そういう存在であれば、音楽家とAIはうまく共存できるんじゃないかなと思いますね。
――人だからこそ生まれるもの、AIを使うからこそうまれるものもありますね。
八角さま:コロナの時は演奏会や音楽イベントの多くが中止になりましたが、それをきっかけにオンライン配信という新しい形も生まれました。
それまでだったら会場に来られる人しか聴けなかったものが、遠くにいる人にも届けられるようになったことは、大きな進歩だったと思います。
そう考えると、AIに限らず技術の進歩によって音楽の可能性や届けられる場所はどんどん広がっていると思うんです。こうして良い方向に活用できるのであれば、とても素晴らしいことだと思います。
10年後、20年後には今は想像もしていない新しい音楽の形が生まれているかもしれませんし、それは楽しみな部分でもありますね。
――今後挑戦していきたいことや、実現したい夢を教えてください。
八角さま:まずは引き続き演奏活動を続けていきたいですし、教える活動も続けていきたいと思っています。
そして今は一般企業でも働いているので、この二足のわらじも続けていきたいなと思っています。
これは本当に私個人の考え方なんですけど、私は音楽だけ一本で生きていくというよりも、一般企業で働きながら音楽を続ける今のスタイルが自分には合っているなと感じているんです。
音楽とはまったく違う世界で働くことで得られる経験や出会いがあって、それがピアノにもすごく生きていると感じています。だから今後もその両方を続けていきたいですね。
そのうえで、やっぱりいつか海外で演奏したいという夢があります。
海外にはたくさんのコンクールやオーディションがありますし、そういったものにも挑戦してみたいと思っています。これは私にとって大きな夢の一つです。
そしてもう一つは演奏する場所をつくりたいということです。
クラシックは敷居が高かったり、場所も金額が高くて借りられないなど、いろんな問題があるのですが、そういったイメージを変えて、誰でも気軽に演奏できて、誰でも気軽に聞きに来られる場所を私自身が作れたらいいなという想いもあります。
――応援しています!八角さま、本日はありがとうございました。












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